2027年の金商法改正施行、2028年の申告分離課税——スケジュールは、もう全員が知っています。それでも競争力に差がつくのは、同じ社内に「今動ける役割」と「待つ役割」が同居しているから。役割単位の準備地図を、一枚に描きました。
2027年とされる金商法改正施行と、2028年目標の申告分離課税は金融機関の間で共有済み。しかし、いま何に着手すべきかは「業態」ではなく、その金融機関が担う「役割」ごとに分かれます。
信託銀行のカストディ、証券会社のST対応、保険会社の保険組成は制度を待たずに動けます。一方でETFの販売や自己勘定での保有は、運用会社の組成やガイドライン・バーゼル規制を待つ役割です。
先行優位は業態の看板から生まれるのではありません。役割ごとの依存関係を見極め、依存の浅い役割から着手することで生まれる——それが本レポートの結論です。
閣議決定・衆院可決までは確定。成立・公布以降は見込み(施行日は政令指定)。金商法改正・投信法施行令・申告分離課税の3つは役割が異なり、後者2つは連動しています。
①をクリアしても②が残る——この二層のどちらに、どれだけ縛られるか。それが役割ごとの「今やる/待つ」を分けます。
業法・監督指針のレイヤー。銀行・保険が暗号資産をどの条件で扱えるか。本体保有の可否は金融審WG報告(2025年12月)が方向性を示した段階で、業態別ガイドラインはこれから固まります。
裏付けのない暗号資産(グループ2)への掛け目。①をクリアしても②が残るため、メガバンク(国際統一基準行)や大手証券の自己勘定保有は、当面「重い選択」であり続けます。
同じ金融機関でも、担う役割ごとに制度・他者への依存度は異なります。縦に主体、横に役割。各セルにカーソルを合わせて、自社の座標を確かめてください。
| 主体 \ 役割 | 交換業の保有 | 自己勘定での保有・投資 | ステーブルコイン発行 | ETF・投信の組成 | ETFの販売 | カストディ | ST・トークン化への備え |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 銀行(メガ) | 子会社で参入可認可制 | バーゼル1,250%経済性で重い | 信託型SC3行・2026年度実取引へ | — | — | — | 様子見 |
| 証券会社 | 子会社で参入可野村(Laser Digital)先行 | 大手はバーゼル対象最終指定親会社 | — | — | 運用会社待ち受動・後発 | — | 先行着手可STが第一歩 |
| 信託銀行 | — | — | 発行済JPYSC・2026年6月発行 | — | — | 参入準備が先行JADAT・NEC×CG | 着手可 |
| 保険会社 | — | 制度待ち適格資産・資本規制 | — | — | — | — | — |
| 運用会社(AM) | — | — | — | 設計は今・申請は確定後 | — | — | 着手可 |
| その他機関投資家(年金等) | — | 受託者責任で注視 | — | — | — | — | — |
| 暗号資産交換業者 | 自社が交換業 | 本業として保有 | 流通に関与余地 | — | 流通に関与余地 | 中核機能自社で保管 | 中核機能取引の場 |
出所:金融審議会WG報告(2025年12月)および各社一次開示に基づきHashHub Research整理。状態は相対評価であり、各役割の参入可否・優劣を確定的に示すものではありません。※保険会社は別途、暗号資産関連保険の「組成・引受」という動ける役割を持ちます。
発行体(JPYSC)・カストディ(JADAT、NEC×Crypto Garage)と、依存の浅い役割を複数抱えるため、自社の判断で着手できる範囲が最も広い位置にあります。
ETFの「販売」は運用会社の組成を待つ後発の役割。一方でST・トークナイゼーションへの「備え」は今から動けます。同じ社内に、先行と後発が同居しています。
既存保有者の移行・NISA等の新規資金・富裕層/法人の追加配分——3つの資金の出どころを積み上げて試算しました(資金流入ベース・価格変動は織り込まず)。
制度確定後に一斉スタートする後発の金融機関は、最初の1〜2年を教育・技術基準・法務精査といった体制整備に費やすことになります。そしてこの差は、いま事業成果には表れません。ETF販売のように全員が本格運用前の役割では、準備の進度差は見えないまま蓄積し、解禁初年度に初めて——「動ける役割を先に整えた金融機関」と「確定後に着手する金融機関」の分岐として——表面化します。
答えは明快です。先行できるのは「業態」ではなく、「役割」——大多数が「未確定だから待つ」を選んでいる現在だからこそ、依存の浅い役割から先行して準備を進める金融機関が、相対的な優位を取れます。ガイドライン確定の有無にかかわらず着手できる役割(人材・教育・技術基準・法務精査・発行体準備・カストディ開発)から始め、確定後に動く役割(申請・販売体制・商品最終化)と明確に分ける——この役割単位の仕分けを自社の見取り図に照らして設計できるかどうかが、2028年以降に先手を取るための実質的な競争優位の源泉になると、HashHubは考えています。
本ページはエッセンスの抜粋です。フルレポート(PDF)では、主体別の仕分け・市場規模試算の前提テーブル・モニタリング指標・一次資料リンクまで、実務に落とせる粒度で提供します。
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